*徒然なるままに#

 


「スマホと育児」毎日新聞、社説欄より #02

視点 論説委員、重里徹也

◇大切にしたい成長過程


 日本小児科医会は乳幼児(小学校就学以前の子供)がスマートフォンに接することを控えるように保護者などに呼びかけている。子供と電子メディアの関係を考えるきっかけにしたい。

 スマホはすさまじい勢いで普及している。ベネッセ教育総合研究所が今年3月に首都圏在住で生後6カ月から6歳までの乳幼児を持つ母親3234人に調査をした。スマホを使っている母親は全体の6割。29歳以下では8割にのぼった。スマホを使っている母親を持つ2、3歳児の2割超が、ほとんど毎日、スマホに接していた。

 こうした実態に対して、日本小児科医会は「スマホに子守りをさせないで!」と題したポスターを作製した。2004年に「2歳までのテレビやビデオの視聴は控えましょう」などと呼びかけて以来の取り組みだ。

 同医会理事の内海裕美さんは、外来患者や街の親子を見るに見かねたのだという。

 まず、乳幼児期には成長のために、視覚だけでなく嗅覚や触覚など身体の五感をフルに使うことが必要で、スマホで習慣的に赤ちゃんをあやすと成長をゆがめかねないと警鐘を鳴らす。

 積み木遊びをすると、木の重さや硬さ、においを感じ、腕に落ちれば痛みを感じる。砂遊びでも同様だ。バーチャルな体験を重ねても五感は養われない。

 内海さんは、乳幼児が泣けば、なぜ泣くのかを考えることが大事で、親子はそんなやりとりの中で、一緒に成長していくものだというのだ。

 親がスマホに熱中して子供のことがおろそかになるのは困るし、抱きしめたり、絵本の読み聞かせをしたりすることの大切さはいうまでもないだろう。

 一方で、子供向けのアプリが多く開発されている。乳幼児がスマホに接する時のガイドライン作成にかかわった山内祐平・東大准教授は親子が一緒に接するべきだと強調する。「2歳以下は電子メディアに接するのは1日30分以内に、3歳以上も保護者とコミュニケーションしながら接するのが基本で、2時間が上限でしょう」という。

 米国では子供向けのテレビ教育番組が言語能力の発達を促すという研究もある。家庭環境や成長具合を考慮し、アプリを選別して、保護者が自覚的に電子メディアを使うことが必要だと山内さんは指摘する。

 問題は乳幼児だけではない。子供たちの視力の低下が深刻で、スマホなどの影響が考えられる。ネット依存症も心配だ。

 スマホは便利な道具だが、その使い方を家庭や教育機関がしっかりと考える時にきている。

URL:http://mainichi.jp/opinion/news/20131224k0000m070111000c.html 

 

道具は扱い方一つ。

いま一度、歴史から学ぶ必要性をとらえ、後世に伝えて生きたいと思う。